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title: 応答と安定性
url: https://doc.liz6.com/ja/theory/02-control-theory/03-response-and-stability
locale: ja
area: theory
tags:
- 制御理論
- 基礎理論
date: 2026-09-10
modified: 2026-09-10
description: 一回のシミュレーションで目標に近づいても、すべての条件で安定とは限りません。安定な応答同士でも、速さやオーバーシュートは異なります。動的モデルの状態と指数応答を使って整理します。
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# 応答と安定性

一回のシミュレーションで目標に近づいても、すべての条件で安定とは限りません。安定な応答同士でも、速さやオーバーシュートは異なります。[動的モデル](02-dynamic-models.md)の状態と指数応答を使って整理します。

## 自由応答と入力による応答

線形系では、初期状態による自由応答と入力による応答を分けられます。一定入力の温度応答は

$$\theta(t)=\theta_\infty+(\theta_0-\theta_\infty)e^{-t/\tau}.$$

第2項は初期偏差の減衰です。初期温度を変える試験と、目標値を変える試験は異なります。初期値、入力、外乱、観測時間、操作量制限を記録します。

遅れも飽和もない比例温度制御では、平衡からの偏差が

$$\dot x=-\frac{k+P_{\max}K_p}{C_{\mathrm{th}}}x$$

に従います。正のパラメータと$K_p=0.04$では時定数は$2000/(20+40)=33.33$ sで、単調に平衡へ戻ります。正のゲインを増やすだけでは状態は増えません。実物が振動するなら、フィルタ、アクチュエータ、積分、遅れなど省略した動特性を調べます。

## 二つの状態と振動

質量・ばね・ダンパ系は$m\ddot q+b\dot q+k_sq=F$に従います。位置と速度が状態です。平衡位置を通過しても速度が残り、さらに進みます。減衰はエネルギーを散逸させます。正規化した二次系は

$$\ddot y+2\zeta\omega_n\dot y+\omega_n^2y=\omega_n^2r.$$

$\omega_n=\sqrt{k_s/m}$はrad/s、$\zeta=b/(2\sqrt{mk_s})$は無次元です。$0<\zeta<1$は不足減衰、1は臨界減衰、1より大きい場合は過減衰です。

初期値ゼロの単位ステップ応答では、$0<\zeta<1$、$\omega_d=\omega_n\sqrt{1-\zeta^2}$として

$$y(t)=1-e^{-\zeta\omega_nt}\left[\cos(\omega_dt)+\frac\zeta{\sqrt{1-\zeta^2}}\sin(\omega_dt)\right].$$

減衰する包絡線の中で振動します。オーバーシュート率は$M_p=e^{-\pi\zeta/\sqrt{1-\zeta^2}}$です。$\omega_n=1,\zeta=0.5$なら、最初のピークは$t_p=\pi/\omega_d\approx3.63$ s、超過量は16.3%です。

**応答と安定性 · 実験**

初期値ゼロの標準二次系への単位ステップです。出力の極値で速度はゼロになります。超過量の式は0<ζ<1に適用し、20 sの軌道だけで一般の安定性は証明しません。


減衰を変え、出力と速度を比較してください。出力の極大・極小で速度はゼロですが、目標を横切るときは通常ゼロではありません。臨界減衰はこの標準モデルで振動しませんが、すべての系で最速という意味ではありません。

## 安定性の意味を指定する

| 概念 | 問うこと | 注意点 |
| --- | --- | --- |
| Lyapunov安定 | 十分近い初期状態は近くにとどまるか | 収束は要求しない |
| 漸近安定 | 近くにとどまり、平衡へ収束するか | 局所的な保証は大域的保証ではない |
| BIBO安定 | 初期値ゼロで、任意の有界入力に出力が有界か | 隠れた内部モードは見えない場合がある |

標準二次系は$\zeta>0$で減衰します。$\zeta=0$の自由振動は有界でも減衰せず、共振周波数の有界な正弦入力によって応答が無限に増える場合があります。自由応答が有界というだけではBIBO安定を証明できません。負の減衰では偏差が増幅されます。

無入力の機械系で$V=\tfrac12mv^2+\tfrac12k_sq^2$とすると、$\dot V=-bv^2\le0$です。エネルギーが増えないことは分かりますが、漸近収束には、$\dot V=0$にとどまれる軌道が原点だけであることも確認します。これは不変集合を使う方法への入口です。

## 応答指標には定義が必要

立上り時間の閾値、整定時間の許容帯、オーバーシュートの基準を明示します。$t_s\approx4/(\zeta\omega_n)$は不足減衰二次系の2%帯に対する近似です。有限時間の図で分かるのは、観測範囲内で最後に帯へ入った時刻までであり、将来の逸脱を否定できません。目標ゼロでは絶対許容差が必要です。安定性、偏差、速さ、操作量を分けて評価します。

## 理解を確かめる

一定振幅の自由振動は漸近安定やBIBO安定の証拠ですか。

<details><summary>考え方</summary>

収束していないため漸近収束ではありません。一つの有界軌道から任意の有界入力への応答も判断できません。無減衰共振器が反例です。

</details>

$\zeta=0.5$を固定し、$\omega_n$を1から2へ変えるとどうなりますか。

<details><summary>考え方</summary>

超過量は16.3%のまま、最初のピーク時刻は約1.81 sへ半減します。追加の零点、遅れ、飽和がない標準モデルでの結果です。

</details>

## 発展資料

[Caltechの制御講義](https://murray.cds.caltech.edu/CDS_110/ChE_105,_Spring_2024)では、モデル、状態空間、位相図、安定性を関連づけています。次章では制御器自体の動的状態を加えます。
