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title: 周波数応答と安定余裕
url: https://doc.liz6.com/ja/theory/02-control-theory/06-frequency-response-and-margins
locale: ja
area: theory
tags:
- 制御理論
- 基礎理論
date: 2026-09-10
modified: 2026-09-10
description: ゆっくりした入力には追従できても、速い入力では出力が小さく遅れる場合があります。周波数応答はその違いを整理し、帰還の安定余裕を調べる方法です。伝達関数と極を前提にします。
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# 周波数応答と安定余裕

ゆっくりした入力には追従できても、速い入力では出力が小さく遅れる場合があります。周波数応答はその違いを整理し、帰還の安定余裕を調べる方法です。[伝達関数と極](05-transfer-functions-and-poles.md)を前提にします。

## 正弦波で調べる

安定なLTI対象に$u(t)=A\sin\omega t$を加え、初期過渡が減衰した後は

$$y(t)=A|P(j\omega)|\sin[\omega t+\arg P(j\omega)].$$

振幅比は大きさ、位相は周期内のずれを表します。角周波数はrad/sで、Hzとの関係は$f=\omega/(2\pi)$です。$P=50/(100s+1)$なら

$$|P(j\omega)|=\frac{50}{\sqrt{1+(100\omega)^2}},\qquad \arg P(j\omega)=-\arctan(100\omega).$$

$\omega=0.01$では振幅比35.36、位相−45°です。すべての信号に同じ固定遅延があるという意味ではなく、周波数ごとに関係が異なります。

## 対象からループ全体へ

閉ループ分母は$1+L$、$L=PC$です。正規化した例として

$$L(s)=\frac2{s+1}e^{-\tau_ds}$$

を使います。対象の時定数は1 sで、前の熱モデルとは異なります。遅れなしの閉ループ極は−3です。むだ時間の応答$e^{-j\omega\tau_d}$は振幅1、位相$-\omega\tau_d$ラジアンです。

ゲイン交差は$|L(j\omega_c)|=1$なので$\omega_c=\sqrt3\approx1.732$ rad/sです。遅れなしでは位相−60°、位相余裕120°です。遅れを加えると

$$\mathrm{PM}=120^\circ-\omega_c\tau_d\frac{180^\circ}{\pi}.$$

0.5 sでは約70.4°、最初にゼロになるのは約1.209 sです。この開ループ安定・単一ゲイン交差の例では、最初の不安定化境界になります。任意のループに適用できる式ではありません。

**周波数応答と安定余裕 · 実験**

ループL(s)=2e^(−τs)/(s+1)。縦の破線はゲイン交差√3 rad/sです。むだ時間は振幅を変えず位相を遅らせます。正弦波はループ自体の定常応答です。


遅れを変えると振幅は変わらず、位相だけが下がります。縦の印がゲイン交差です。観測周波数を変えて正弦波定常応答も確認します。位相曲線は−180°で折り返さず、連続して表示します。

## Bode線図、ゲイン余裕、Nyquist

Bode線図は$20\log_{10}|L|$と位相を対数周波数軸に描きます。0 dBは振幅1、−6.02 dBは約0.5です。ループゲインは無次元で、単位付き対象のゲインには基準を明示します。

位相交差$\omega_\pi$では位相が−180°となり、ゲイン余裕は$1/|L(j\omega_\pi)|$、dBでは$-20\log_{10}|L(j\omega_\pi)|$です。有限の位相交差がなく余裕が無限大と表示されても、未知の遅れを無制限に許容できるわけではありません。

Nyquist判別法は右半平面を囲む経路の像を追い、−1点の周回と開ループ不安定極から閉ループ不安定極を判断します。$1+L$への偏角原理に基づくため、経路方向と虚軸極の回避を明示します。開ループ不安定、多重交差、隠れた内部モードがある場合、一つの正の位相余裕だけでは不十分です。

## 帯域は取捨選択を含む

交差周波数を上げると応答を速くできる場合がありますが、同じ遅れの位相損失が大きくなり、雑音や未モデル化の高周波モードも重要になります。対象の帯域、ループ交差、閉ループの閾値帯域は別の量です。

位相余裕だけを最大化せず、速さ、外乱抑制、操作制限、ロバスト性を比較します。[制約とロバスト性](08-constraints-and-robustness.md)で感度関数から各経路を区別します。

## 理解を確かめる

$2/(s+1)$に0.5 sのむだ時間を加えるとゲイン交差は変わりますか。

<details><summary>考え方</summary>

振幅が1のため変わらず$\sqrt3$です。それでも位相余裕は120°から約70.4°に減少します。

</details>

ツールが`gm=2`を返したら2 dBですか。

<details><summary>考え方</summary>

線形倍率2なら約6.02 dBです。返される量の単位と、どちらの交差周波数なのかを確認します。

</details>

## 発展資料

[python-controlの`margin`](https://python-control.readthedocs.io/en/stable/generated/control.margin.html)は、ゲイン余裕、度単位の位相余裕、二つの交差周波数を定義しています。複数交差がある場合は全体を確認します。
